1)

 ●クライアント情報

性別  :女性

年齢  :53

施術回数:0回

主症状 :「クモ膜下出血」「左脳の脳梗塞」による、右半身の麻痺。現在車椅子を左手である程度動かせる、右の手先も少しだけ動かせる。意識はしっかりしていて、リハビリも意欲的にこなしている、と。小声ながら話せるようになってきたらしい。

経過  :4月下旬に「クモ膜下出血」。家族に発見され救急病院ICUへ,眉間のあたりにあった動脈瘤が破裂していて、カテーテル手術によってコイルで処置が行われた。その後「左脳の脳梗塞」も発症。ずっと意識がなく予断を許さない状況が続いていたが、2週間後、意識が戻り危機的状態から脱した。現在はリハビリ専門の病院に移り、日々リハビリを頑張っている模様(お見舞いは家族のみなのでご家族の話)。車椅子に座れるようになり、意識もはっきり、表情もでてきて笑えるようになってきたとのこと。目や耳からの情報を理解し、質問についての回答を○で囲んだり、ホワイトボードに書いてある名前をまねて書いたり、塗り絵を塗ったりのリハビリをされているらしい。スマホも少し前までは見ているだけだったのが、今は来たメールを見て、転送もできるらしい。

(直江先生が昔話されていた、脳卒中後の回復が良くなる話や、交通事故にあった人もとにかく親指だけでも揉んでおくように指示していたら回復した話など、が印象に残っていたので)今回の事があり、回復期に入ったらリハビリがより効果的に進む一助になれば、ぜひ足揉みをしてあげたいと思いました。

実際には、主治医の先生のOKがもらえ(ご本人が自宅に戻り足揉み施術を希望した場合、ということになりますが(ご主人は了解済み。自宅に戻るのがいつになるかはまだ分かりません)。

質問事項:

【進め方についての質問】

Q:他人の足を揉んだ経験が少ない上に、患部が頭なので、頭の反射区を押すのは、良くも悪くも効果がでそうで、怖い気持ちもあります。

慎重に以下の通りに進めていこうと思いますが、するべきではない、とか、間違っている、十分に注意すべき点、その他付け加える点がある等、アドバイスを頂けたら幸いです。

A:基本的に医師の許可が出ている状態というのは、出血等を起こす危険性はないと判断されてのことですから、問題はありません。

おっかなびっくり恐る恐るやるのと慎重にやるのとでは雲泥の違いがありますので、慎重になりつつもゆっくり大胆に行ってよろしいかと思います。

これが基本姿勢です。あとは個別に答えていきましょう。

Q:カテーテルを挿入した傷口や頭内の出血、静脈瘤のコイルのあたりも含め、出血が止まり傷が十分完治しているかどうか、足揉みで血流が良くなっても大丈夫か?をお医者様に確認してもらい、許可が出てからと思います。

A:退院許可が出るというのは傷等が完全に治癒しているという判断に基づきますので、述べたように問題ないと思いますよ。

質問者のコメント:

・テキストP.4-5の施術における注意を、自分も十分気をつけ、患者さんにも説明して(好転反応も)行います。

・患者さんも足揉み初体験なので、本人の表情を見ながら、足全体に優しめにゆっくりとした施術を(特に頭の反射区は刺激しすぎないように様子を見ながら)と考えています。時間も負担が少ない様、片足15分ずつ位で考えています。

・施術後の変化を家族から教えてもらい、記録を残しておく。

・頻度は1週間に1度くらい。

・徐々になれてきたら、少しずつ深く施術し、時間も片足30分位までなら伸ばしてみてもよいかと思っています。

・3カ月(7月下旬)以降であればまあまあ普通の施術をしていってもよいのではないかと考えています。

A:仰る通りです。そのように実行してください。

【技術的な質問】

Q:車いすに乗った状態で健常側の左足はもめるとしても、左足はどの程度伸ばせるか分からないので足裏をみることが無理な状態ならば、ベッドか布団に寝てもらって痛くない安定した状態で足裏をみながら施術した方が良いと思いますが、いかがでしょうか?

A:ああ、そうですね。賢明な判断です。是非、そのようにやってください。

Q:脳梗塞の後遺症(右半身麻痺)を改善する為に、重点を置いた方が良い反射区はありますか?

A:基本的なことをお話しますね。まず我々の若い頃(1980年代)は脳細胞、特に神経ニューロンは成人において再生することはなされていました。それどころか、増えことはないので、死滅する一方だと・・・

しかし、1990年代くらいから、風向きが変わってきます。実は20世紀初頭から脳の神経は増えるという説があって、いくつか検証もされていたのです。しかし、学界はこれを信じず、百年近く経っても、脳の再生はない、という説を支持していました。しかし90年代くらいから再検証が進み、確定的に脳の神経ニューロンが増えるという説が定着するに至ったわけです。で、西暦2000年、この説の証明者がノーベル賞を取るに至って、世間も認知するようになりました。

難しいことは省略しますが、要はリハビリ(運動も含め)を行うことによって、脳神経ニューロンは増え、しかし、そのままだとまた元に戻るので、毎日のように学習を繰り返すことによって、新生ニューロンが定着するというものです。

脳の傷つき方にも依りますが、リハビリは無駄なことはありませんし、プラス適度な運動を行えば、予後に大きな影響を及ぼすという考え方の根拠にもなっているわけです。

さて、我々はこれらのことを基礎として施術を行うわけですが、脳の反射区は脳から一番遠いところにあるので、安全です。また全息胚原理によって、脳そのものの血流を良くすることができます(血流なくして新生はありませんから重要な要素です)

しかし、ここで考えなければイケナイのは脳への血流を阻害しているのは、脳そのものというよりも、肩(僧帽筋など)や首になるということです。

ここを緩めるという意味で、これらの反射区も重点にしなければいけませんね。

また麻痺がかかっていますから全身が歪な状態になっています。つまり結局は全部の反射区をやるということで全身の血流、ひいては脳の血流がよくなるわけです。

以上のようなことを頭に入れておいてください。

その上で、重点とすべきは「脳系反射区」「首の反射区」「僧帽筋の反射区」「頚椎、胸椎、腰椎の反射区」(脊髄反射を高める為)となるわけです。

2)

クライアント情報

性別:女性

年齢:50代

施術回数:これから

主症状:末期ガン 全身

経過:余命宣告を受けている

質問事項:初めて足揉みをされる末期ガンの方は、メンケン反応が出るのでしょうか?

虚証に該当するので、押圧は弱めというより、初めは擦る程度の圧力がいいのでしょうか?

回答

これはまた深刻な病態ですね。この後に及んではホスピスケアになっていますかね。

つまり、抗がん剤等の治療はしていないと考えて良いのかな。

その前提でお話しますね。

メンケンが出るかどうかは個人差があります。

擦る程度ではさすがに効果は出ませんから、持続圧で様子を見ながら深めていったほうが良いと思います。大丈夫なようでしたら、勉強会でお話したフリクションで刺激を強めても良いでしょう。しかし、あくまでも個々の体質によって反応の仕方が違いますので、その都度、施術者の判断が優先されます。

余命宣告を受けていて、生還する人も居ますが、稀な例となります。

むしろ、がんと共存するという考え方のほうが結果として延命できるので、その考え方を採用するのを勧めています。

詳しくは(資料を含め)、師範会議でお話しましたので、お近くの師範の方に相談されたら良いでしょう。

3)

●クライアント情報

60代後半の男性で、通われて一年になりますが、2022年暮れに左内耳に帯状疱疹を発症し、

その影響で左目まぶた、左頬、上顎、下顎と麻痺。それを治したいと辛抱強く治療を受けられております。

重点反射区として右足の三叉神経・目、耳、上顎、下顎を中心に行っておりますが、圧痛を毎回感じておられます。一時良くなられたのですが、5月に筋肉弛緩剤のボトックス注射してからまた目が閉じにくくなったりとあまり良くない状態が続いております。

また来月ボトックス注射で病院にいくそうですが、今度は止めるそうです。

他にこの反射区を重点反射区として欲しいなどがあればアドバイスをお願い出来れば幸いです。

回答

内耳に帯状疱疹が発症したのですか・・・珍しいですね。

難儀ですね。奇病の類になりましょうか。なんとか力になってあげたいものです。

ところで、顔面麻痺を伴っているようなので、ラムゼイ・ハント症候群という診断名が付くと思うのですが、仮にそうであっても、そうでなくとも足揉み的に施術法が大きく変わることはありません。

質問の中にあります重点反射区はもちろん外すことはできません。これはこれで重点にしてください。

それに加え、耳の中の症状には胸鎖乳突筋という首の筋肉が功を奏します。

これは首の横から前部にかけて走行し、首を回旋させる大事な筋肉です。本当は直接、施術することが望ましいのですが、反射区を使っても相応の効果があります。

つまり「首の反射区」ですよね。首の反射区の前側付近にコリっとしたスジのようなものを感じるかと思いますが、それが胸鎖乳突筋に対応する部位です。ここも重点にしてください。

この方の場合、こじらせてしまったのでしょうか。今は後遺症的な症状に苦しんでいるかと思いますが、またいつ再発症するか分かりません。免疫力を高めておくべきでしょう。日光を浴びて散歩するなどの対策や、足揉みでいうと、足全体、就中、小腸の反射区などが免疫力をアップします。

4)

【2024年6月10日のZoom勉強会に対しての質問】

Q:私の聞き間違いかもしれませんが、

メンケン反応の⑩症状が一時的に悪化するがテーマのときに、「梅雨の始まりは体の状態を知るとき」と仰いましたか?

A:梅雨と言っていません。

おそらく「治癒」を聞き間違えたのではないでしょうか。滑舌が悪くて申し訳ない。

しかし、梅雨のときに症状が悪化しやすい病態もありますね。関節炎とか、リウマチとか。

これは東洋医学でいう湿邪によるものということになります。

湿気ですね。湿気が強いと症状が悪化することがある病態を昔から知っていて、その原因を湿邪と名付けたのでしょう。

また梅雨は副交感神経が優位になりやすいのも事実ですから、それによって痛みが増強される場合もあるでしょう。

Q:ここのお話は、例えば、ボクシングの話が出ましたので、ろっ骨にヒビが入っていたならば(今の私の状態ですが)足もみをすることで、一時的にろっ骨がより痛くなる、ということだと      理解しておりますが、

 まず一点、それは、体を修復しようとして痛くなるのですか?

A:メンケン反応というのは、必ず起こるものではありません。むしろ足揉みでは少ないと思います。しかし、一種の治癒反応として起こり得るので、それが起こったときに慌てないでくださいねと、そういう意味での講義でした。かならずメンケンが起こると理解されたならば、私の言葉が足りないということになります。ごめんなさい。

もし、起きたとしたら、その通りです。身体の修復過程での反応ということになります。

ですから、メンケンを別名「治癒反応」とか「リセット反応」と呼ぶわけです。

Q:二点目、「梅雨」と仰っていたならば、梅雨との関係はどう理解したらよろしいですか?

A:すでにお答えしましたが、もう少し詳しくいうと、正式には「痰飲湿邪」(たんいんしつじゃ)と呼びます。

日本独特の気候や食べ物で、こういう体質の人が非常に多いと言われています。

要するに水が豊富であるということと、梅雨に代表されるように湿気が多いという環境におかれていることが原因ですね。

したがって、他国の人よりも浮腫みが出やすかったり、膝等の関節を悪くする人が多かったりするわけです。ですから梅雨がメンケン反応の原因とはなりません。単に病状を悪化させているということになります。