単に「腰筋」と呼ばれる場合もありますし、「腸腰筋」と呼ばれる場合もあるこの筋肉は、とても重要な役割をしております。

名前から、腰に関係することはピンとくるかと思いますが、実際の筋肉の配置を知っている人は少ないでしょう。

“腰”という文字が充てがわれているにも関わらず、腰(背中側)から触れることが出来ず、お腹側からしかアプローチできません。

つまり背骨の前側から付いていて、そのまま小腸の下をくぐり、股関節の内下にある小転子という突起に付着しているという、目立つのが嫌い(笑)な筋肉なのです。

何故、重要かというと、この筋肉が弱ると、

  • 腰痛の原因となります
  • 歩行力の減退、とくに加齢からくるもの
  • ②の原因になるのですが、足が持ち上げづらくなる(つまずく)
  • 排便力の減衰

とまあ、ざっとこんなものでしょうか。

①から説明しましょう。腰が痛いというのは辛いものですよね。腰椎に問題があったり腰回りの筋肉に問題があったりもしますが、実は一番多いのは臀部筋に問題が起きていて、腰痛という症状が出ていることです。そんなわけで臀部筋は盲点といえば盲点なのですが、背中側からアプローチしやすく、そのことさえ知っていれば、そんなに苦労しません。

ところが、この大腰筋に問題が起きていることも多く、もしこの筋が原因なら、普通の整体師はまず見つけることができません。仮に見つけることが出来たとしてもアプローチの仕方の訓練がなされておらず、しっかりこの筋を緩めることができる施術者は非常に少ないと申せましょう。ですから、難治性の腰痛として片付けられてしまい、どこに行っても直せないと。そんな風に言われることが多くなるわけです。

さて、整体のことはさておき、足揉みでこの大腰筋にアプローチするにはどうしたらいいか?

腰椎の反射区でも、まあまあ反射しないわけではありませんが、ちょっと弱いです。じゃどこか?

さきほど先程、『小腸の下をくぐり』と述べました。

そう!小腸の奥深い部位が該当するわけです。

横行結腸も多少かかるかもしれません。

反射区というのは“位置系”ですので、臓器が重なってある場合は立体的に捉えれば良いわけです。つまり「小腸」の反射区の奥行きをイメージして、深く底に達するように施術すれば良いのです。

確かに、小腸の反射区近辺を深く持続圧すると、腰が楽になった、軽くなった、と証言するクライアントさんに何人も出会っています。

当時(足揉み時代)は不思議だったのですが、今考えれば不思議でも何でもなく、たまたま大腰筋が原因の腰痛者だったのでしょう。

①が解決すれば②と③は自然と解決していきますから、これは、特に触れません。

触れておきたいのは、④の排便力ですね。

普通、排便力が弱いというのは、大腸の活動力(蠕動運動)が弱いイコールと考えられております。

もちろん、間違いではありません。大腸の活動力に必要な善玉筋を増やすべく、様々な菌活が提唱されておりますし、またそれが功を奏する場合もたくさんあるわけです。

しかし、忘れてならないのはこの大腰筋なのですね。

これが弱いと踏ん張る力が弱まってしまって、せっかく大腸の活性化が図られていても、今ひとつ、スッキリ出ないということもあるわけです。

腸活、菌活の重要性は巷でよく語られます。注目もされているので、良い商品も出ていることでしょう。(実際に存在することは自身の体験でよく知っております)

しかし、大腰筋は盲点ですよね。

筋肉ですので、運動等で鍛えるしかないんじゃないかと、そんな風にも思われますが、まず血流を良くしないといけません。

準備運動なしにいきなり本番の運動をすると身体を傷めてしまうことはよく知られた事実でしょう。

ウォーキングを取り入れられている方や、菌活・腸活をされている方は盲点となりますから、まずは小腸反射区の深い位置をイメージして施術をしたら如何でしょうか?(或いは施術してあげる)

排便がきちっとなされるというのは全ての健康状態に影響しますから、無視することはできません。

※因みに大腸がんが女性のがんの第一位に踊り出ていて、この傾向はしばらく収まりそうもありません。おそらく便秘による宿便によって、悪玉菌が増えてのことでしょう。また、悪玉菌は乳がんの原因とも言われており、これもがんの中では極端な増加傾向を示しているのは偶然ではないと思われます。

小腸(大腸も含め)の反射区にアプローチすることによって、排便力が高まったと・・・その考え方でも良いのですが、実はその奥にある大腰筋に反射して、便通が良くなったという場合もあるということは、頭に入れておいた方がいいでしょう。

なぜなら、反射区を立体で捉えるイメージがあるなら、そのイメージによって施術が微妙に変わり、実際、そこに到達することがあるからです。

“知識は力”であるというのは、それがイメージを生み、そのイメージが現実の技術に反映されてくるからに他なりません。

そんなことで、今回は大腰筋と小腸の反射区について述べてみました。

菌活・腸活は健康寿命に直接影響する重要な要素であると、近年、盛んに言われております。

そこには、排便力という根本的な問題があるということを大腰筋という観点から、述べてみました。複数ある要素の中で、見落としがちで、かつ我々が得意とする分野がこの大腰筋ではないでしょうか。

少しでも施術のイメージに役立てて頂ければ望外の喜びです。

2021年5月